株式会社セガ -【SEGA CORPORATION】

MAKING

ゲームができるまで

『龍が如く』シリーズ
開発者インタビュー

MEMBER PROFILE

プランナー 池田 さくら

2020年入社。
『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』にプランナーとして開発に携わり、最新作『龍が如く8』においてもプランナーとして、仲間イベントや新規コンテンツ『ドンドコ島』を担当。

デザイナー 中村 恭輔

2018年入社。
PS4『BORDER BREAK』、『艦これアーケード』、『龍が如く維新 極』『龍が如く7外伝』といったアーケードタイトル、コンシューマタイトルにデザイナーとして開発に携わり、最新作『龍が如く8』においてはキャラクターデザインを担当。

プログラマ 舘野 友貴美

2018年入社。
『龍が如く7』、『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』といったコンシューマタイトルにプログラマとして開発に携わり、最新作『龍が如く8』においてもプログラマとして、ゲーム内UI設計を担当。

20年近くにわたって愛されている人気アクションアドベンチャーゲーム『龍が如く』シリーズ。2023年11月に『龍が如く7外伝 名を消した男』を発売したばかりだが、2024年1月発売の『龍が如く8』は舞台をハワイに移し、さらにストーリーにバリエーションが加わり、バトルシーンの迫力も増している。開発の裏側を若手クリエイターに聞いた。

長く続く人気シリーズ制作に加わることになったわけですが、開発への意気込みとチームの印象について聞かせてください。

池田

私は重厚なストーリーを軸にサブストーリーやミニゲームなど色んな要素が詰まっている『龍が如く』シリーズが大好きで、自分でもプレイしていたので「自分が作ってもいいんだ!」といううれしさが大きかったです。女性ファンも多いと聞いていましたが、制作チームにも女性スタッフが多いことには驚きました。

舘野

人気タイトルの開発に関わるということへのプレッシャーや不安はなかったのですが、私の場合は別のスタジオから龍が如くスタジオに異動してきたので、新しい環境でまったく知らない人たちと仕事をすることへの不安の方が最初は大きかったです…。

中村

私は『龍が如く 維新! 極』からこのシリーズに参加したので、ゲームの世界観からハードな部署のイメージがありましたが、実際にはソフトな印象のユニークな方が多く、世間がイメージするような人はいませんでした(笑)。

舘野

実際に話してみるとこわい人はいなかったですね(笑)

プロジェクトでの役割と、こだわったところについて教えてください。

池田

『龍が如く8』で仲間との絆を深める要素や会話イベント、寂れた島を開拓し一大リゾート地を築く新規コンテンツ「ドンドコ島」を担当しています。ユーザーとしての視点も大切にしながら、どういう要素があればもっとゲームが楽しくなるかを念頭にアイデアを出していました。

舘野

ゲーム中のUI設計を担当しました。長く続いているシリーズなので、これまでの操作感を損ねず、新しい要素を違和感なくUIに反映させるのに苦心しましたね。周りに相談せず「このボタンに割り当ててしまおう」と実装したことがあったのですが、ゲームの中で不自然でおかしな操作になってしまい、“ほうれんそう(報連相)”の大切さも痛感しました。

中村

僕は「龍が如く7外伝」でメインキャラクターとバトル周りのキャラクターデザインを担当しました。『龍が如く』ではメインキャラは実在の俳優とタイアップするなどゲームにリアルティを持たせています。モデルとなる俳優の過去の出演作をチェックしたり、髪型もキャラクターに合わせて似合うものを考えたりして、その俳優のイメージを損ねずキャラクターの魅力を表現することにこだわりました。

技術的に苦労したところはありましたか?

舘野

メモリ不足には悩まされました。ハワイが舞台になったことでステージが広大になり、ハワイの賑やかさを表現しようとすると表示するUIも多くなってしまい、処理負荷が高くなる場所を徹底的に調べて対処しましたが、今度はデザイナーから「もっとリッチな表現にしたい」と要望がでてくるなど、いかに品質を落とさず最適化するかに苦労しました。

中村

長く続いているシリーズなので、過去のデータを活用したり、加工するなどして効率的に作ることはできますが、ファッションがいまの流行と比べると古臭いものになってしまうことがあります。チーム内だけでは課題を解決することが難しかったため、ファッションアドバイザーを迎え入れることで、『龍が如く』の世界観に合うファッションをいまの流行に合わせてアップデートできたと思います。

周囲には経験豊富な先輩も多いと思いますが、若手が提案できる機会はありましたか?

中村

もちろんたくさんあります! 僕は若手だからこそ最新のトレンドに触れる機会が多いと思っています。世代が近いのでファッションやSNS映えの感性も共感しやすいですし。「この服装はいまだと古臭いです」とか、臆せずどんどん提案しました。

池田

大きな仕様からちょっとしたエピソードまで、幅広く提案の機会がありました。日常のコミュニケーションの場で出た小さなアイデアを採用してもらったこともあります。例えば、私は『龍が如く』の足立宏一というキャラが好きなのですが、彼はちょっとお茶目なところがあるので「アボカド」のことを「あぼがぼ」と噛んでしまいそう…という話を上司にしました。その後、飲食店で会話を楽しむイベント「宴会トーク」のエピソードとして採用してもらえました。これはほんの一例ですが、大きな仕様はもちろん、小さなアイデアも実現することができる環境だと思います。

『龍が如く』の開発の場合、企画段階で仕様が完全に決まっているケースはあまりありません。方針や方向性は決まっているものの、それをどのように実現していくかはプランナーに委ねられます。たとえば、新規コンテンツ「ドンドコ島」は、若手プランナー3名で担当したのですが、最初にディレクターからいくつかのキーワードと、「島での暮らしを楽しむ」「島を飾り付ける」といったコンセプトがおりてきました。しかし、検証を進めていくにつれて、「あれ?これだけで本当に面白いのだろうか」と。それからチーム内で、どうしたら『龍が如く』のユーザーが面白いと感じてくれるだろうか?と議論を重ねた結果、現在のシミュレーション寄りのゲームになりました。

舘野

私は表示周りで提案することが多いです。たとえば、「ゲームのこの部分がわかりにくいからここでダイアログボックスを出したい」と言われたときに、ゲーム全体で考えるとその表示方法だと浮いてしまうと感じたので、「グレイアウトしてみては?」「ここに表記してみては?」などの代替案を提案したことがよくありました。

先輩からはどんなアドバイスをもらいましたか?

中村

実在の俳優をスキャンしてゲームのキャラクターをデザインするには、本人のイメージを崩さない様にしつつゲームならではのデフォルメが必要です。『龍が如く』の世界観に合った“いかつさ”“力強さ”を出すのに悩んでいたときに、先輩に「もっと毛穴が開いた汗ばんだ肌をイメージしてみては?」といったアドバイスをいただき、キャラクターをより魅力的に見せる引き出しが増えました。

舘野

『龍が如く』の開発環境では毎日自動テストが稼働していて、不具合が発見されるとメールでエラーが送信されてくる仕組みがあります。私がミスをしてエラーを起こしたときに、上司から同じことが起こらないよう原因を自分で探し出して修正できる方法についてアドバイスをいただきました。

池田

他職種への仕様説明の場でうまく意図を伝えられなかった際、デザイナーが重視している視覚的な美しさ、プログラマが意識している技術的な側面など、それぞれの立場からの意向を汲み取って「こういう風に実現したらうまくいくんじゃないか」と上司に助け船を出していただきました。

一緒にゲームを作っているメンバーがどういった立場と思考で開発に取り組んでいるのかを意識しながら、目的を明確に伝える必要があることに気付かされました。

プロジェクトを終えて成長したところ、今後の目標について。

中村

『龍が如く』チームは新たな技術を採り入れていくことに積極的ですので、使えるツールの幅が広がりました。ゲームのデザイナーに求められるのは、リアルなものをダイレクトに表現するのではなく、あくまで “らしさ”を追究し魅力的なビジュアルをつくること。まだまだクオリティが足りないところは多いと感じています。『龍が如く』は世界に向けた作品ですので、より一層、グローバルな視点を意識し多くのユーザーに喜ばれるビジュアルを作っていきたいと思います。

池田

今回、ミニゲームの「ドンドコ島」の仕様作成やバランス調整を経験し、達成感が得られる手触りのいいゲーム作りを学ぶことができました。『龍が如く』シリーズは様々な要素が詰まったスケールの大きなゲームなので、将来的にはタイトル全体に絡むような、より大きな視野で企画を提案できるようになりたいです。

舘野

今回一番学んだのはデバッグの仕方でした。処理落ちやバグが発生したときに自分でツールを使用して原因を見つけて修正するなど、問題が発生した際のアプローチができるようになりました。また、今後に向けて、マルチプラットフォームに対応したUIについての知見を広げ、さらにUIへの理解を深めたいと思っています。

セガだからできること、どんな方がセガに向いているか教えてください。

中村

セガにはアーケードゲームを開発していたメンバーもおり、ゲームによる遊び方の違いや画面の見栄えの違いなど、とにかくゲームに関する知識の深い人が多いです。どんな問題が起きても対応できる環境があるというのは、ゲーム開発に携わるうえで心強いです。

池田

先輩や上司との距離が近く、若手でもディレクターやプロデューサーに直接提案することができます。また、先輩や上司が耳を傾けてくれ、どうすれば実現できるかを一緒に考えてくれます。経験がなくても挑戦しやすい環境だと思うので、何か実現したいことがある方におすすめです。

舘野

専門性の高い先輩が周りにたくさんいることです。シェーダーに詳しい先輩、機材に詳しい先輩、コアな部分に詳しい先輩など皆さん知識が豊富で、何を聞いても大体答えが返ってきます。また、社内の研修も充実しており学べる環境があります。ゲーム開発者として新しい技術を吸収するには、またとない環境だと思いますよ。