株式会社セガ -【SEGA CORPORATION】

MAKING

ゲームができるまで

『ソニックフロンティア』
開発者インタビュー

MEMBER PROFILE

サブリードプランナー 平野 将也

2014年入社。
『マリオ&ソニック AT リオオリンピック』、『マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック』といったコンシューマタイトルでプランナーとして開発に携わり、本作『ソニックフロンティア』ではサブリードプランナーを担当。

背景デザイナー サブリーダー 髙橋 由紀

1998年入社。
『ソニックフォース』、『ソニックロストワールド』といったコンシューマタイトルで背景サブリーダーとして開発に携わり、『新サクラ大戦』では背景リーダーを務める。本作『ソニックフロンティア』では背景サブリーダーを担当。

謎解きコンテンツ プログラマリーダー 三石 悠喜

2019年入社。
『新サクラ大戦』、『マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック』といったコンシューマタイトルでプログラマとして開発に携わり、本作『ソニックフロンティア』では謎解きコンテンツのプログラムリーダーを担当。

2022年11月に世界同時発売された『ソニックフロンティア』は、「ソニック」シリーズ初のオープンワールドへの挑戦となった。新しい挑戦をするためにどのような苦労があったのか、プロジェクトに携わったメンバーに開発の裏側について聞いた。

『ソニックフロンティア』開発メンバーとなった際の思いやの意気込みについて聞かせください。

平野

「ソニックをもう一度世界で闘えるタイトルにする」というのが至上命題で、まったく新しい第三世代のソニックゲームに生まれ変わらせるためにクオリティを引き上げることを目指しました。『東京2020オリンピック The Official Video Game』でグローバルタイトルの経験はありましたが、新たにオープンワールドに挑むという期待感がありましたね。

髙橋

私は長年ソニックタイトルに携わっていたので、グローバルな視点でのゲーム開発の経験はありましたが、マルチプラットフォームと世界同時発売は初めてで、さらにオープンワールドに挑戦とは、これは大変なプロジェクトになるという予感がありました。とはいっても、これまで毎回新しいことに挑戦してきたので、今回もみんなで協力すればできると思っていました。

三石

私は中途入社で入社し、間もなく『ソニックフロンティア』に参加をしたということもあり周囲の方々に比べるとソニックに対する経験が浅く、ソニックがどういうところを目指しているのかを理解することから始まりました。さらに、”オープンゾーン”(※)という大きな挑戦が合わさって、やりとげられるか多少の不安はありました。それでも、長くソニックに携わっている人が多いので、やりやすい環境ではありましたね。

※従来のステージクリア型アクションゲームでワールドマップと呼ばれているものを遊べるようにしたもの、ソニックのゲームではワールドをゾーンと呼んでいるので、セガ開発陣が命名

今回のプロジェクトのメンバー構成と役割について教えてください。

平野

私は、参加当初はプランナーとしてコースの設計やレベルデザインを担当していましたが、次第に担当領域が増え最終的にはサブリードプランナーとしてメンバーのクオリティチェックや、ゲームのアクション部分のほぼすべてを担当していました。開発チーム規模としては、プランナーは最大20名ほど、デザイナー・プログラマ・サウンド等含めた開発メンバーは最大時でおよそ120名で開発にあたっていました。

髙橋

背景デザイナーとして主に“オープンゾーン”の謎解きコンテンツのオブジェクト制作を担当しました。併行して最大25名ほどの背景デザインチームのサブリーダーとして組織の編成やスケジュール管理を行っていました。

三石

プログラマは、「(ゲーム内の)遊び」によっていくつかのチームに分かれていたのですが、私は”オープンゾーン”上にある謎解きコンテンツのプログラムのチームリーダーを担当していました。
チームに所属するプログラマは時期によって4名から7名程度と流動的ではありましたが、リーダーとして、プランナーやデザイナーとの橋渡しやチームメンバーの進行管理のほか、ストーリー関連の実装やミニゲームの実装も行っていました。

従来のアクションステージとは違う”オープンゾーン”の開発はどのように進んでいったのでしょうか?

平野

一番のチャレンジである“オープンゾーン”の全体像がなかなか掴めず、その中の遊びをどう生み出していくかが課題でした。アクションゲームなので、プレイしてみて面白いかは実際に試してみないとわからない。どうやったらソニックらしく遊べるのかを念頭に、とにかく思いついたアイデアを実装して確認する作業を繰り返しました。

髙橋

今回のプロジェクトは通算5年近くかかっています。最初の1年は少人数で仕様を詰めている段階で、私はその間は別のプロジェクトにいて、戻ってきた時点でできていた試作はグラフィック的にも遊び的にもまだまだ納得のいくものになっていませんでした。プロジェクトの中では、“ヘッジホッグエンジン”という、ソニックのゲーム性に特化した自社ゲームエンジンを使用しているのですが、こちらの開発も併行して進んでいて、”オープンゾーン”の作成に必要な機能を続々と追加している状態でした。チームは「新しいものを作らなくては!」「ここで失敗したら後がない!」という危機感でいっぱいでしたね。

三石

当初”オープンゾーン”の遊びは「謎解き」が主体だったのですが、プランナーが出した仕様を「もっとこういうことをやったら面白いんじゃないか?」と工夫して実装し、その反応を見ながら相当作り直しました。試作段階では、仕様がなくプログラマが試作として作成しプランナーへ提案することもありましたし、実際にそれが採用されてギミックとして実装されたものもあります。

髙橋

試作段階を経て、本格的に取り掛かった“オープンゾーン”の島はクロノス島(本作でソニックが最初に辿り着く島)の3倍以上の表面積があり、謎解きのギミックが多数配置されているといったものでした。例えばゲーム冒頭にある“回転する石像”もその一つ。「ソニック」シリーズとしては新しい試みではありましたが、スピード感に欠けて「これはソニックの遊びじゃない!」ということになりました。

平野

ソニックの要はアクションなのに、みんな「謎解き」という言葉にとらわれ過ぎてしまっていましたよね。入社3年目の若手プログラマが“グラインドレール生成装置”というギミックを提案して、それをきっかけに一気に動きだした気がする。”オープンゾーン”の中にも楽しんで移動しつつ、謎解きやバトルに誘導する導線をレベルデザインする方向に大きく軌道修正してソニックらしい仕掛けを追加していって製品版のオープンゾーンが出来上がっていきましたね。

髙橋

同時に島も広く同じような風景ばかりで退屈という意見が多かったので、背景デザインもコンセプトから見直し、大きく改修することになりました。アクションステージとは違い、360度どこから見ても違和感なく作る必要がありました。また、天候や時間変化の表現も力を入れたポイントですね。『ソニックフロンティア』の世界は現実世界に近いからこそ、少しの違和感が気になってしまう。リアリティを追求しながら、飽きさせないロケーションやワクワクするポイントなどゲームならではのオリジナリティを足していくところは苦労をしましたね。「遺跡班」「岩班」「植物班」といった専門のチームを作りリアリティを追求して作りこんでいく、というのもソニックチームとしては初めての試みでした。

海外と日本とでの反応の違いなど、グローバルタイトルならではの制作の難しさはありましたか?

髙橋

日本でアピールしたいことと海外でアピールしたいことが違うことが多くありました。日本側ではいままでにない「ソニックフロンティア」らしい世界観を推しだすために、あえてシリアスなメインビジュアルになっていましたが、北米ではこれまでのソニックと同様の王道なビジュアルを望まれることもありました。

開発中に数回、北米で実際にユーザーに近い方たちにゲームをプレイしてもらって、その反応をチェックするユーザープレイテストを実施したのですが、ユーザーの反応次第で作り直しになることも数えきれないほどありました。これまでもプレイテストはやってきましたが、プレイテストを繰り返しながら改善する手法をとったのは今回が初めてです。

平野

海外のプレイテストの反応はリアルタイムで観て、すぐにディレクターと話し合って改善するようにしていました。

三石

海外のプレイテストではシビアに点数になって返ってくるんですよね。同時にプレイ動画も観られるので、たしかにこの流れじゃ面白くないだろうなとわかる。で、その部分を改善すると確かにプレイテストの点数が上がるんですよ。6点が8点になるとか。それをモチベーションにしていました。

平野

プレイテストの点数が低かったときでもチーム全員が、「いままでのソニックならOKだったかもしれないけど、もっと上の面白さに到達しようよ!」という意気込みで取り組んでいましたね。基本、私の立場は上がってきた試作をその遊びがソニックらしいかジャッジする役目。ソニックはプラットフォームアクションで、走ってジャンプして、移動が楽しいゲームであることが第一条件。
プレイテストの点数が低いときはコメント、フィードバックも参考に、“オープンゾーン”の遊びの完成形に向けて施策を打っていきました。
海外ユーザーのプレイテストがようやく8、9点に上がってきたときにチーム内に「これならいける!」という手ごたえが生まれましたね。

プロジェクトを終えての感想、今後挑戦していきたいことについて教えてください。

平野

『ソニックフロンティア』はこれまでのソニックのステージクリア型の枠を越えて、“オープンゾーン”で360度全方位にアクションを楽しめる、より自由度が増したゲームになっています。会社の看板を背負うに恥じないクオリティを出すプレッシャーはありましたが、おかげさまで好評で、本編のアップデートも進めることができました。

今回ソニックの開発に初めて参加し、最終的にはリーダーとしてアクション面全般に関わり、アクションゲームの骨組みや構成への理解を深められました。ここで得た知見を活かして、生まれ変わったソニックの第三世代の遊びを更に進化させていき、一人でも多くの方に楽しんでいただけるようなゲームを開発したいですね。

髙橋

遺跡など、オリジナリティのある世界観を出すのに苦労しましたが、ひとまず新しいソニックの世界観を打ち出すことができました。今回のプロジェクトでは、今までは個人のスキルに頼っていた部分を、協力してひとつのものに作り上げる組織編成を心がけました。若手のメンバーには、個々の得意分野を伸ばしながら、苦手なところにも挑戦してもらうことで、現場のスキルの底上げがはかれたと思います。

世界の壁は厚く、まだAAAの仲間入りをしたとは言えないと思うので、今後、AAAに並ぶにふさわしいグラフィックデザインを追究していきたいですね。

三石

『ソニックフロンティア』で第三世代のソニックの可能性を示すことができました。ソニックタイトルとして初めてのオープンワールドへの挑戦、かつ私個人としてもある程度の規模のチームリーダーを担当するというのは初めての経験でしたが、チーム全体が「ソニックらしさ」を目指して面白さを突き詰める場面に立ち合えたことは、非常に刺激になりました。ストーリー進行やゲーム全体に関わる実装が経験できたことも大きかったです。今後は自ら貪欲に発信し、本作を越えるゲーム開発に挑戦していきたいと思います。

セガならではの魅力、応募者の方へのメッセージをお願いします。

平野

今回のプロジェクトで、“オープンゾーン”のレベル構成は入社5年目以内の若手が中心でした。経験豊富な先輩が周囲にいて、若手が活躍できる――いろんなことに挑戦できる土壌が整っているのがセガの強みだと思います。

髙橋

自社ゲームエンジン“ヘッジホッグエンジン”の開発にもデザイナー窓口として関わりましたが、デザイナーからの要望やフィードバックを直接伝えて、使いやすいエンジンを考えてもらえるのもセガの強みですね。技術があるから挑戦ができる。さらに、自分がやりたいことをどうやったらできるか、上司が一緒に考えてくれる文化がセガにはあります。背景制作からキャラクター制作に転向したケースもありますし、デザインでキャリアチェンジできる会社は業界でもそう多くないと思います。

三石

ステージ型アクションやプレイヤーアクション、エネミー、UIなど、多岐にわたる実装を行うことができ、様々なプラットフォーム展開もしているので手広く技術的なことに触れる機会がある。社内でゲームエンジンを作っているからこそ、タイトルの特性に合わせて自分たちでチューニングして最適化もできる。自分がやりたいことを伝えると聞いてもらいやすいので、何か突き詰めていきたい人にも、幅広くゲーム開発に興味がある人にも、セガはスキルを高められるとても良い環境だと思いますよ。