株式会社セガ -【SEGA CORPORATION】

MAKING

ゲームができるまで

『WEB3・メタバース』
新領域への取り組み

MEMBER PROFILE

代表取締役 社長執行役員COO 内海 州史

様々なエンターテイメント業界を経て、
2019年にセガサミーホールディングス入社。
2021年4月より現職

戦略投資担当部門 部長 堀江 悦子

2015年入社。モバイルゲーム関連の戦略投資を担ったのち、現在はセガサミーホールディングス株式会社のCVC部門と株式会社セガのビジネス開発本部テック開発部を兼務。
セガでは、事業戦略に基づいた投資活動を実施。

マーケティング担当部門 副部長 向 大地

2018年入社。スマートフォン向けアプリゲームや家庭用ゲームのプロダクトマネージャーを経て、YouTubeチャンネルやTikTokの制作・運営、インフルエンサー様とのタイアップなど、コミュニティに強い動画特化チームを立ち上げる。
現在は、動画に限らずに新しいマーケティング領域を担当。

「ソニック」シリーズや「龍が如く」シリーズなど、国内のみならず世界中で人気の高いゲームタイトルを何本も開発している株式会社セガ。ゲームに留まらず、幅広いエンタテインメント事業を展開しており、時代を象徴する製品を数多く生み出してきました。

そんな当社が現在注力しているのが、メタバースやWeb3といった新領域。当社が持つIP(Intellectual Property)やゲームに関わる技術力・ノウハウを掛け合わせ、これまでにない新しい感動体験を作ろうと、新規事業としてプロジェクトを立ち上げ本格的に取り組んでいます。

メタバースやWeb3領域のスタートアップへの投資も

堀江さんの経歴について教えてください。

堀江

20代はアメリカで働き、帰国後はモバイルコンテンツ業界の経営企画部門で海外展開や戦略投資に携わってきました。セガに入社したのは8年ほど前。ちょうど世の中がガラケーからスマートフォンに移行し、スマホ向けゲームアプリにマーケットがシフトしていくタイミングで、スマホ向けゲームアプリ開発・運営事業を行っていた株式会社セガネットワークス(現在は株式会社セガ)に入社し、モバイルゲーム関連の戦略投資を担ってきました。

現在は、セガサミーホールディングス株式会社の経営企画本部の投資マネジメント部と株式会社セガのビジネス開発本部のテック開発部を兼務しています。セガサミーホールディングスでは、オープンイノベーションを推進する役割・業務を担っており、その一環でCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を運営しています。活動を通して、セガサミーグループが総合エンタメ企業グループとして成長・拡大していくための新たな技術やエコシステムの立ち上がりに関する情報やオポチュニティを探しています。セガでは、中長期的な視点でセガの新規事業や既存事業の成長に繋がる領域にリーチし、ネットワーキング活動などを通じて知見を高めていくほか、事業戦略に基づいた投資活動を行っています。

どのような投資活動をされているのでしょうか?

堀江

グローバルにセガサミーグループを成長させてゆくために広い目線で活動していますが、なかでも、メタバースやWeb3はフォーカスしている領域です。将来的にはゲームを中心としたエンタテインメントがその領域の主役となり、成長を牽引してゆける分野だと考えています。セガサミーホールディングスとセガの業務を兼務することで、一方だけでは実現できなかった相互メリットを生み出すことができていると感じています。事業会社視点でのニーズやシーズをCVCとしても理解をしながら投資活動を進めること、そしてそこで得られた情報やネットワークを事業会社に渡して生かして事業につなげていく、というブリッジとしての活動をしています。

ブロックチェーンゲームとセガが持つIPの掛け合わせは、未知の領域

メタバースやWeb3の領域で、セガが目指している方向性を教えてください。

堀江

ゆくゆくはメタバースが事業領域になり、現在セガが目指している「SuperGame」が結果としてメタバースになる、そして「SupereGame」を実現するための手段としてWeb3が取り入れられていくのではないかと思っています。そのときに、メタバース・Web3の領域における技術や仕組みのうち、どういうピースを取り込んでいったらエンタメとして面白いのか、事業部門と連携し話をしながら適切なオプションを選択できるように、幅広いオプションを提示できるようにしていきたいと考えています。また、最初からすべてを自社で内製化することが良いとも限らないので、オープンイノベーションで業界内外と連携をして、仮説検証をしながら取り組んでいきたいと考えています。

現在行っている取り組みについて教えてください。

堀江

一例としては、投資先を始めとするパートナー企業へのライセンスアウトです。セガのIPを使って、投資先でブロックチェーンゲームを開発して新領域におけるラーニングを行っています。スタートアップ企業ではさまざまなブロックチェーンゲーム開発にチャレンジをしている段階ではありますが、著名なIPを取り込んだ事例はまだ多くはありません。セガには現役でヒットしているタイトルもあれば、過去にグローバルで親しまれてきたタイトルもあります。その中からラーニングに適したIPを選んで、掛け合わせてみることでどういった反応があるか、投資先企業と一緒に取り組んでいきたいと考えています。

ブロックチェーンゲームは、「Play to Earn」が主役となり市場を拡大してきましたが、マスアダプションが進むにつれ、今後はまた違ったプレースタイルのものが出てくる可能性も大いにあります。「Earn」に縛られない面白さ、をゲーム会社としては見出していきたい思いもあります。最終的にはもちろん「Earn」する側面はあるかもしれませんが、その手前にまずゲームとしての面白さを提供していきたい、ここの思いはブラさずに進めていきたいと思っています。

投資部門の視点では、新規事業に対してどのような未来を描いていますか?

堀江

セガはビジネス規模ではグローバルに展開しており、新規の事業を興していく際にもグローバルを意識し大きな波にしたいという思いがあります。短期的な利益を追求するのではなく、中長期的にエンタメ業界を盛り上げていくことを考えると、やはりグローバルである必要があります。

5~10年後に、セガが最先端技術を駆使して面白いことをやる会社でありたい。そういった視点で投資活動に取り組んでいます。オープンイノベーションを牽引するCVC投資部門側の視点で言うと、将来的には必ずしもセガが主役として携わってなくても良いと思っています。たとえば、外部のパートナーと連携して、面白いコンテンツを作るのがセガ、広めるのが他社というケースもあり得ます。今は自分たちのポジションを固めずに仮説検証しながら、これは自社で、これはパートナーシップで、と柔軟に判断していきたいです。

また、持っているIPのアウトプット先はゲームだけではないとも思っています。もちろんセガとして最も得意なアウトプットはゲームではありますが、他にできる技術もあります。新規事業においては特に、固定観念に囚われすぎてしまうと自ら選択肢を狭めてしまう可能性もあるので、アウトプット先も予め決める必要はないと考えています。

Web3が主流になったら、エンタメ業界はどう変わるのか

Web2.0からWeb3になると、どのような変化があると思いますか?

堀江

Web2.0は中央集権型、Web3は個の時代と言われています。今までは大企業に情報が集約されているという面もありましたが、それによって個人が守られている部分もありました。Web3になると個人の裁量が増える分、リスクも大きくなります。そのため、一気にWeb2.0からWeb3へ振り切って実現されることは考えにくいです。最低限の経済的な損失を防ぐとか、個人情報の流出を防ぐとか、そういった規制が進んだうえで、修正されたWeb3の世界が構築されていくだろうと思っています。

エンタメ業界に関してはどうでしょうか?

堀江

これまでクリエイターは2次流通や3次流通の際のロイヤリティを得る機会がなかったので、Web3によってクリエイターに還元されるようになることは良い変化だと思います。「クリエイター・エコノミー」という言葉もよく聞くようになりましたが、個人のクリエイティブな活動にさまざまな人が参加できるという意味でWeb2.0を超えた世界ができるのではと思います。エンタメがより参加型になり、クリエイターとユーザーが距離感を縮めることで、ゲーム会社やプラットフォーマーが集客したり中央集権で管理しなくても、コミュニティが生まれて人が集まるような環境の変化があるのではないかと楽しみにしています。

クリエイティブ活動が、作る人・買う人という一元的なものじゃなくなるということでしょうか?

堀江

そうですね。ただ、ゼロからのクリエイティブ活動を全員ができるわけではないので、最低限の機能や素材を提供するプラットフォームがあるのかなとは思います。たとえば、ゲームの基本的なキャラクター素材は用意され、ユーザーはそれを組み合わせたり加工したりしてオリジナルアイテムを創るとか。そういった形で、クリエイティブ・エコノミーと関わっていきたいです。

IPホルダーとしては、キャラクターやゲームなどの権利を守ってきた面もあるので、それをどこまでリリースするかは難しい問題です。一方で、今後若い人たちの考え方がどんどん変わっていくなかで、権利を囲い込むことも違うと思っています。ファンを増やすためにも、セガが一方向的に情報発信をするだけではなく、ユーザーにも参加してもらうスタイルが良いとは考えています。

前例のない領域へのチャレンジができる

グローバル企業で働く魅力を教えてください。

堀江

アメリカのビッグテック企業一強だったWeb2.0からWeb3に時代が変わることで、「勝負」のやり直しがきていると思っています。Web3の時代をグローバルで戦うにあたっては、IPを持っていることは大きな強みになります。同じような戦略を持った企業が出てきたとしても、他社と差別化してユーザーを惹きつけることができます。

加えて、セガは日本企業ではありますが海外での認知度が高い企業です。セガの技術力やクリエイティビティを世界に発信していく際に、この認知度は大きなアドバンテージになると思います。

日本のIPホルダーが世界的に有名になる可能性もありますね。

堀江

日本はゲームはもちろん、アニメや漫画など素晴らしいIPがたくさんあります。「ソニック」に関して言えば、海外では日本企業のIPだと知らない人もいると思いますが、もしかしたらそれで良いのかもしれません。ユーザーにとっては、そのゲームやキャラクターがどこの国から生まれたものかは関係なくて、私たちは世界中の人に楽しんでもらえるIPを生んでいくことが大切なのだと思います。

最後に、今回募集している新規事業プロジェクトについて、セガで関わる魅力や面白さを教えてください。

堀江

前例がない領域へのチャレンジを、大手を振ってできるところですね。失敗しても、経験値を積んだと捉える文化も大きな魅力です。それに加えて、セガはグローバルな認知度もありますし、投資ができるだけの資金力もあります。いろんな外部の企業と関わりながら取り組めるのも面白いと思います。メタバースやWeb3の波が来ている今だからこそできる仕事なので、新しいことにチャレンジしたいと思っている人にとっては大きなチャンスだと思います。


※本記事は、2023年2月に行ったインタビュー内容です。