MAKING

ゲームができるまで

『ソニックレーシング クロスワールド』
開発者インタビュー

MEMBER PROFILE

アシスタントプロデューサー/運営プロデューサー 朴 素裕

2014年入社。
プロダクト研究開発部に新卒入社後、「WCCF」プランナー、「WCCF FOOTISTA」メインプランナー、「頭文字D THE ARCADE」のアシスタントプロデューサーを経て、本作ではアシスタントプロデューサーを担当。リリース後は運営プロデューサーも兼任。

ディレクター 川上 慎悟

2010年入社。
第二CS研究開発部企画セクションに中途入社後、「マリオ&ソニック AT オリンピック」シリーズの北京〜東京まで夏季冬季すべてにプランナーとして参加。本作では現場のディレクターとしてクリエイティブ全体を管理。

アートディレクター 山鹿 裕司

2004年入社。
R&D本部ソニックチームに中途入社後、「ソニック ワールドアドベンチャー」「ソニック ジェネレーションズ」「ソニックフロンティア」などのソニックシリーズに携わる。本作ではパッケージリリースまでのアートディレクターを担当。

チーフプログラマ 竹山 峻平

2012年入社。
戦略企画室ソフト技術セクションに新卒入社後、「頭文字D Arcade Stage」シリーズ、「HOUSE OF THE DEAD ~SCARLET DAWN~」「三国志大戦」などにプログラマとして携わる。本作ではプログラマの業務管理と技術面のディレクションを担当。

サウンド 小国 奏音

2018年入社。
サウンド開発部に中途入社後、「maimai でらっくす」「CHUNITHM」「オンゲキ」にてサウンド開発を担当。本作ではBGM制作に加え、サウンドプロモーションやサウンドディレクションを担当。

世界中のファンに届ける“驚きと変化”は、どう作られたのか

セガ内製として初めて本格的に挑むソニックレーシングタイトル『ソニックレーシング クロスワールド』。コンシューマのソニックチーム、アーケードレースチーム、音ゲーチームの知見が合流し、クロスワールド、ガジェット、クロスプラットフォーム対戦、多数のIPコラボ、グローバルプロモーションなど、これまでにない挑戦が詰め込まれました。

本稿では、開発の裏側を座談会形式で紹介します。セガでソニックを作ることの面白さ、世界中のファンに向けてものづくりをするスケール感、そして各職種がどのように本作ならではの体験を支えたのかを聞きました。

プロジェクトの立ち上げ経緯を教えてください。

これまでの「ソニックレーシング」のシリーズは、協力会社様が中心に開発するケースが多かったと聞いていました。本作は、これまでアーケードレースゲームで培った、内製ノウハウを最大限活用する形で、コンシューマチームと一緒になって、最高の「ソニックレーシング」を作るということを目標にしたプロジェクトでした。

川上

そうですね。文化の違いで戸惑う部分もありましたが、結果的には相乗効果を出せたと思います。私や山鹿はコンシューマ側、竹山、朴、小国はアーケード側のチームから来ています。
バックグラウンドの違うメンバーが集まっていること自体が、まず面白いところでした。

開発時に特にこだわったことや、苦労したことを教えてください。

川上

企画として特にこだわったのは「驚き」と「変化」という2つのキーワードです。レースの2周目に別のコースに突入する「クロスワールド」という仕組みを設け、異なる世界へ飛び込む瞬間の「驚き」を、そしてレースごとにオブジェクトの配置やルートが変わる「変化」を生み出し、同じコースを繰り返し走っても毎回違うレース体験になるよう設計しました。さらに装備すると特殊効果が付加される「ガジェット」というシステムを加えました。6つのガジェットをデッキのように組み合わせてレース戦略を自分でカスタマイズできるようにしたのです。最初はガジェットの効果を控えめに設定していたのですが、本作ならではの個性を出しきれないと判断し、レース展開に大きく影響するレベルまで高めることにしました。

山鹿

一方で、新しい仕組みを入れるうえでは「わかりやすさ」もとても意識しました。多くの世代の方が触ってすぐに遊べるように、コースのシチュエーションからUIのアイコンに至るまで、さまざまな部分でわかりやすさを大切にしています。特に2周目のクロスワールドを選択してから遷移する部分は、どうすればプレイヤーが迷わず自然に遊べるのか、何度も実験を繰り返しました。

小国

サウンド面でも「変化」と「繰り返し遊んでも飽きない」ことを強く意識しました。音ゲーチームのノウハウを活かして、1曲のAメロ・Bメロ・サビを1分以内に収める短尺設計を全楽曲で徹底しています。1周ごとに楽曲が変わるアーケードに近い体験を意識した結果ですね。BGM・効果音・キャラクターボイスの三者がそれぞれ存在感を持ちながらも調和するバランスを見つけるのには、かなり苦労しました。

ゲーム体験そのものを磨く一方で、コラボレーション展開にも特に力を入れました。有償コラボとして『マインクラフト』『スポンジ・ボブ』『パックマン』『ロックマン』といった、世界中に多くのファンを持つIPの皆さまにご協力いただいています。無償コラボでは初音ミクさん、社内からは『龍が如く』シリーズの春日一番、グループ会社のアトラスから『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』のジョーカー、Rovioから『アングリーバード』のレッドが参戦するなど、グループ総出で協力してもらいました。

川上

こうして振り返ると、クロスワールド、ガジェット、見た目のわかりやすさ、サウンド、コラボレーション、そしてオンライン環境まで、それぞれのパートが本作ならではの体験につながっていると思います。大変なことは多かったですが、そのぶん「ソニックレーシング」でしか味わえない楽しさを作れたのではないかと思います。

開発中に最も大きかった技術的チャレンジは何でしたか?

本作では、クロスワールドへ移動するという大きな特徴がありますが、企画書からここまでたどり着くまでに本当にいろいろなことがありました。ここはとてつもない苦労をしたプログラマとデザイナーに語ってもらいたいところです。

竹山

はい、大変でした(笑)。最も大きかったのは、全プラットフォームをまたいだ対戦の実現です。異なるSwitch、PS5、PC版なども含めたクロスプラットフォームで、かつグローバルでの対戦は業界でも前例がほぼありませんでしたが、それを発売日から実現しようと決めました。コースを複数連結する仕組みを構築するにあたっては、複数の技術課題がありました。たとえば、トラベルリング[1.1](異なる世界を繋げるゲート)をレース中に1位のプレイヤーが動的に選択する仕様がありますが、これを実現するうえで通信同期の問題がありました。本作では日本と地球の裏側にいるブラジルのプレイヤーがマッチングするようなケースも起こり得るため、大きな通信遅延が発生する可能性があります。そのため、想定されるワーストケースでもトラベルリング選択の通信同期が間に合うように、コースや走行速度のレギュレーション設計を行っています。企画とも連携しながら、技術的な制約の中で、ゲーム性や気持ちよさを損なわない落としどころを探っていきました。

セガの世界各地の支社に協力してもらって時差の関係もあって深夜にテストをよくしていましたよね。

竹山

そうですね、自分たちで一から検証するしかなく、世界各地にあるセガの拠点に協力を仰いで、クロスリージョンでの通信テストを何度も実施しました。時差の関係で終電後にメンバーが集まってテストすることもあり、なかなかタフな取り組みでした。そうして集めたデータをもとに、距離が離れていても成立する通信ロジックを組み上げ、クローズドネットワークテスト(CNT)やオープンネットワークテスト(ONT)を通じて精度を高めていきました。特に発売1ヶ月前のオープンネットワークテスト(ONT)で重大な通信処理の問題が発覚し、第2事業部全員、約300名を動員してテストして、2~3日で修正したことは鮮明に覚えています。大変ではありましたが、ネットワークテストでは累計約100万ダウンロードに達し、技術的な検証の場であるとともに、ユーザーの方々に本作への信頼を示す機会にもなったと感じています。

川上

トラベルリングは、プレイヤーにとっては気持ちよく選んで、そのまま次の世界へ飛び込んでいく体験に見えると思いますが、裏側ではかなり複雑なことをしていますよね。

竹山

そうですね。大きいところではライティングの異なる複数コースを同時に表示する仕様実現のため、Unreal Engine5の描画システムにかなり手を加えています。特にSwitchのみForward Renderingを使用している都合で、改造箇所が倍になってしまい、描画エンジニアには苦労をかけました。


※Forward Renderingとは:古くから使われているシンプルな描画方式で、Switchのような処理能力の限られるハードでも比較的負荷が低く、安定して動作しやすい。

山鹿

レースゲームなので、コースはゲームの面白さや質を決める重要な要素です。コース数を確保するため、企画でも自由にコースを作れるコースエディターをゼロから開発したことは大きな転換点でした。従来のレースゲーム開発では、プランナーのイメージをもとにコースを設計し、デザイナーが背景の制作を行っていました。1度背景を作ってしまうとコースを調整する機会は1〜2回程度に限られ、一連のサイクルに多大な時間がかかっていました。本作ではプランナーが自分でパラメータを調整してその場ですぐプレイ確認できる環境を整えました。このエディターがなければ、本作のコースのクオリティと数量は実現できなかったと思います。チームのTA(テクニカルアーティスト)と一緒に取り組みましたが、最初からうまくできる保証があったわけではないので、大きなチャレンジでした。

小国

クロスワールドの体験は、サウンド面でも大きなチャレンジがありました。1周目、2周目、3周目で描かれる「異なる世界どうしがつながっている感覚」を音でも表現したいと考え、BGMがシームレスにつながって聴こえる特殊な実装に挑戦しました。技術的には前例がなく、実装難度も非常に高かったのですが、その分、場面が切り替わる瞬間に生まれる驚きや感動を音楽で演出できたのは大きな成果だったと思います。

他社IPとのコラボレーションは、どのように実現したのでしょうか?

他社IPとのコラボレーションを採用した意図は、発売後も長く話題を作り続け、ソニックファンの皆さまはもちろん、まだソニックに触れたことのない方にもより興味を持っていただくきっかけを作りたいという思いからです。発売前後の盛り上がりだけでなく、長期的にタイトルの話題を広げていく施策として運営型のコンシューマゲームという形を取り、他社様のIPとのコラボレーションをひとつの柱とする企画を考えました。社外、社内のIPホルダーの皆さまにご協力いただくことで、それぞれのIPのファンの方にも『ソニックレーシング クロスワールド』を知っていただき、ソニックの世界に触れていただくきっかけが作れたと思います。

川上

コラボの提案書を作成して協力会社さまに提案するのですが、提案書の作成時には、そのIPのファンが企画メンバーの中に必ずいて、ファンとしての意見をしっかり入れるようにしていました。そのときだけは役職などに関係なく、ファンであるメンバーの意見が強くなるので、普段とは少し違う関係性が生まれて面白かったですね。ロックマンのコースに「ロックバスター」という専用アイテムを用意するなど、IPへの愛をゲーム性に落とし込むことを徹底しました。

山鹿

例えばマインクラフトのコースに関しては、制作元であるMojang Studiosさまの開発担当者の方とかなり密に相談しながら作っていきました。車、キャラクター、背景のドットのサイズを極力同じ大きさに見えるようにするというご提案もいただき、ギリギリまで調整しました。最初の大ジャンプで多数のバイオームが見える景観のアイデアも先方さまからいただいたものです。どちらも想定外で大変ではありましたが、終わってみると本当にやってよかったですし、公式感につながっていると思います。

グローバル展開に向けて、学びや工夫はありましたか?

グローバル展開において特に大きかったのは、世界各地域のチームと認識を揃えながら、ソニックらしさと本作の魅力を一貫して届けていくことでした。本作では、Sega of America、Sega Publishing Europe、SEGA Publishing Korea、SEGA Taiwan、SEGA Singaporeなど、世界中の支社と連携しながら展開を進めていきました。地域ごとにユーザーの嗜好やメディア環境、情報の受け取られ方が異なるため、日本側だけで完結させるのではなく、各地域のチームと意見を交わしながら、どうすれば本作の魅力が最も伝わるかを考えていきました。

山鹿

実は言語によって文字量や画面上での見え方は大きく変わるため、UIやデザインの段階から、文字が長くなっても読みやすく、画面内に自然に収まるように設計しておくことを意識しました。グローバルタイトルとして、世界中のユーザーに同じ品質で楽しんでいただくためには、こうした細かな部分の積み重ねが非常に重要だと感じています。

川上

ソニックファンが特に多いアメリカでは、ユーザーレビューやプレイテストも複数回実施しました。開発チームは日本人が中心なので、現地のユーザーがどこを気にするのかは非常に学びになりました。特にグランプリでのライバルCOMの挙動については反応が大きく、テスト段階では「不自然についてくる」といった意見もありました。そのため、攻撃を受けたら順位を落とすようにしたり、毎回同じキャラクターが1位・2位にならないよう調整したりと、プレイヤーにストレスを感じさせない人間らしい自然な挙動へ細かく調整しています。

小国

日本と海外、特に欧米では、ユーザーの皆さんの音楽の好みにかなり違いがあり、その勘所を掴むまでは苦労しました。開発途中のプレイテストでは、サウンドについても海外テスターの方々からフィードバックをいただけたので、どういうサウンドが好まれるのか、大まかな傾向を把握できたのは非常に大きかったです。

川上

ショーも世界中で開催されていましたよね?

みんなで手分けして世界中に飛んでいました(笑)。The Game Awards 2024、Summer Game Fest 2025での発表をはじめ、サウジアラビア開催のEsports World Cupでのエキシビジョン、BiliBili World、gamescom、東京ゲームショウなど、世界各地のイベントにも出展しました。CNTやONTといったテスト施策も、単なる検証の場ではなく、世界中のユーザーの皆さまにいち早く本作を知っていただき、期待を高めていただく重要なグローバルマーケティング機会として活用しました。

プロモーションフェーズでは、どんなチャレンジがありましたか?

山鹿

特に今回は、ソニック以外のさまざまなIPに触れる機会が多かったことも印象的でした。中でもPJ ONSOKUに関わる初音ミクさん関連の業務は、これまでにない新鮮な取り組みでした。得意なメンバーにいろいろ教わりながらアイデアの提案などを行い、ソニックキャラクターたちのステッカーをストリートアート風にするアイデアもその中で生まれました。かわいさと格好良さの両方がある、ミクさんとのコラボらしい表現になったと思っています。

小国

サウンド面でも、プロモーションにかなり深く関わることができました。PJ ONSOKUやCrazy Raccoonさんとのコラボ楽曲制作は、制作期間もタイトな中での施策だったので大変でしたが、本作を幅広い層に知っていただくきっかけにつなげることができて良かったと思っています。ゲーム本編のサウンドとはまた違った形で、ソニックや本作の魅力を届ける取り組みになりました。

「ソニックレーシング」開発チームの雰囲気を教えてください。

ソニックチームは会話が多く、毎日とても活気のある雰囲気です。職種や立場に関係なく話しかけやすく、気になったことやアイデアをその場で相談しやすい職場だと思います。席の配置も、メンバー同士の会話が自然に生まれやすいように意識していたりします。弊社のソニック総合プロデューサーである飯塚とも毎週会議があり、若手からアイデアを企画提案することも多々あります。チャンスが多い職場でもありますね。

川上

本作では、「どのアクションレースゲームよりも面白くする」という目標を序盤から言い続けていました。その意識がチーム全体に浸透していたので、「この実装はその目標に達しているのか」という議論を、みんなが自然にできていたと思います。また、プレイ会も毎日のように行っていて、ブラッシュアップやバランス調整について意見交換する機会がかなり多かったです。

竹山

議論が活発なチームですよね。各々が課題意識を持ちながら、「どうやったらもっと面白くできるか」「どう解決できるか」を日々考えていて、自然と意見交換が生まれています。また、若いメンバーも裁量を持って活躍しやすい環境だと思います。ベテランのバックアップ体制も整っているため、安心してチャレンジできます。

小国

自分も20代半ばくらいでチームに合流したのですが、サウンドコンセプトやコラボアーティスト選定、BGMディレクションなど、音楽に関わる業務を幅広く担当していました。若いうちからさまざまな役割を任せてもらえたのは、とても貴重な経験になりました。竹山も話した通り「あなたが詳しいなら任せる」という文化があり、若いうちから得意分野を武器にしながら着実にスキルを積み上げていける環境だと実感しています。

最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

私が一番お伝えしたいのは、ソニックは世界中にファンがいる巨大IPだということです。日本のゲームIPで長く世界中の人々に愛されているものは多くはないと思っています。施策を考えるときも、日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど、世界中のユーザーにどう届くかを考えるスケール感の中で、開発、宣伝、運営、コラボ、イベントを動かしていけることは、セガでソニックに携わるうえで大きな魅力だと思います。そんなふうに、世界で勝負したいと思っている方には魅力的な環境だと思います。

川上

トップを走っている他のIPと競い合える位置にいるブランドをセガから発信できることがこのチームで働く最大のやりがいだと思います。守りに入らず、ゲームも映画も含めて常に攻め続けているIPの最前線で働ける環境は、ゲーム業界においてもなかなかないものだと思います。

山鹿

世界中のIPホルダーさまや各国支社と関わりながらひとつのタイトルを作り上げていく難しさと面白さは、ソニックという世界的IPだからこそ得られる経験です。長くソニックに携わってきた中で、ここまで世界に認められるIPになったことを実感するたびに、続けてきてよかったと思います。その歩みをこれからも一緒に進めていける方をお待ちしています。

竹山

技術的にも、簡単なことだけをやるのではなくクロスプラットフォーム、クロスリージョン、複数コースの同時読み込みなど、難しい課題がたくさんありました。その分、解決できたときに本作ならではの体験として返ってくる手応えがあります。そういった一見無理だと思うようなチャレンジを一緒に進めていただける方をお待ちしています。

小国

サウンドも含めて、自分の専門領域を超えてゲーム全体を良くする提案ができるチームです。自分のように若いうちから挑戦したい方、自分の好きや得意を武器にしたい方には、すごく面白い環境だと思います。